ライフスタイルで選ぶ雇用形態と仕事

しかし、私の場合、およそ10年間正社員として働き、あるきっかけでやめた後は、アルバイトや派遣という形でしか働いていない。
それには年齡や持病などの身体的な事情もあったのだが、同時に、今では昔と違って正社員という雇用形態以外の働き方も世間的に認められていることを改めて知ったというのも理由の一つだった。
ちょうどバブル崩壊直後でまだ好景気の余波が十分あった頃に学校を出て就職した私の世代には、一般的に「働く」ということは正社員になることを意味していて、主婦でない限り、パートやアルバイトという選択肢はまずなかった。
もちろん全くありえないわけではなかったが、少なくとも私の周囲に限っては、あくまでもアルバイトというものは正社員としての本業ありきの副業にすぎず、その正社員としての収入だけでは足りないという人が主にアフター5や休日を利用してするものだったような気がする。
しかし、時がたち世の中が不景気になってくると、正社員という立場にばかりこだわってもいられなくなったこともあり、そのアルバイトを本業にせざるをえない人が増えてきた。
それに加え、労働ではなく趣味や将来の夢に向けての準備といった自分のやりたいことを日常生活のメインと位置づけ、それだけでは食べていけないから最低限の生活資金を得る手段としてバイトをするという人も今や珍しくはなくなった。
夢は現実の二の次と無言のうちに教えられてきた世代の私としては、当初はそんな考え方が通用するものなのかと驚くほかはなかったが、そうでなくともいざ自分自身が年齡や健康上の問題という不可抗力事由によって企業側から断られることが多くなってくると、たとえ安時給でも一時的にだとしても採用してくれる所があるなら雇用形態にこだわる必要はないという気持ちのほうが強くなっていったのである。
実際、アルバイト募集の記事や人材派遣会社のサイトなどでも、自分のライフスタイルに合った雇用形態を選んで働くことを肯定する文章が多く見られるようになってきた。
したがって、正社員をやめた後はアルバイトと派遣しか経験していない私だが、今ではそれはそれで、さまざまな理由により正社員として働けない人も労働者として社会的に認めてくれるれっきとした雇用形態であると思っている。